【先の見えない時代だからこそビジョンが大切】
医療法改正や診療報酬改訂の度毎に、戦々恐々として目先の事にばかりエネルギーを費やし、未来へのビジョンを画くことを忘れている病院が多い。そのために建物設備もその都度手を入れるためにツギハギだらけになり、ロングレンジで見れば、大巾なコストの無駄遣いがなされているのが現状である。
医療機関同士の大競争の時代にあって自院が他院にない特色を持つ−即ちオンリーワンの医療を持つ者同士が連携し、地域全体に役立つにはどのような分野を目指すか市場原理(マーケティング)に基づいた必要とされる分野を確立してゆかねばならない。医療機関として治療ではどのような疾患症状の人達か、急性か亜急性か、又は慢性期か、高齢者・中高年・女性・小児かなど中心となるターゲットを絞り込んで自院の得意技を生かせる分野を明確にし、経営の資源−即ちひと(人材)もの(建物・設備・機器)カネ(資金)情報をどのように効率良く用いるか経営の理念や方針を確立しなければならない。
病院建築や設備は大きな投資であり、単なる入れ物や器でなく、経営と共に生きるパートナーとして考えなければならない。経営のビジョンは根っ子であり、理念や方針は幹であり、そこで行われる診療行為やサービス、人・物・金・情報
などは枝であり、患者さん達は葉であると言えよう。
一度建ててしまったら、数十年建て替えが許されない時代にあって、念には念を入れて未来を見つめつつ建物計画に取り組んで欲しいものである。
【お客様が主人公】
今日まで医療はややもすると「〜してあげる」、言うことを聞かせる的な情報の非対称性をいいことに、医療提供側の論理がまかり通っていたきらいがある。しかし、今日の大競争時代にあっては一般企業と同様に、お客様の論理でなければ、生き残りどころか淘汰される時代に変わってしまった。
お客様が主人公とは当然お客様がこうあって欲しいと願うことに他ならない。即ち今までの現物支給の出来高払いの考えはお客様の納得や評価が得られなければ、無駄骨となり、収益も確保できず、赤字に転落することは必定である
たとえば、多床室の方が回診に都合が良く、患者同士が監視してくれるので便利だとか、ナースセンターがナースの溜まり場となっていたり、人間ドックや検査入院が空いた病室に当てられたりといったことなどがそれである。多床室は個室へ、ナースセンターはコメディカルスタッフセンター化へ、人間ドックは専用のフロアやホテルサービス機能を持たせた別棟といったことが考えられなければならない。
労働生産性を上げるために、人員を少数にしたり、原材料・外注などコストを減らしたりするのも患者さんにとってマイナスになるならば、やってはいけないことであり、生産性が上がり、収益が上がった分はまず、患者さんに還元されるべきであり、職員が楽をするためにあるのではない。
【施設を新しくする時は一石三鳥をねらおう】
建物設備を新しくすることを契機に経営のビジョンや理念の見直しや確立をするまたとないチャンスと捉えたい。
急性期であれば救急やリハビリの見直し、人員や組織の見直しやリストラ、患者さんの入院退院のアレンジ、建築計画への職員の参加や活性化、OA化やIT化、外注化の検討など大変やりやすい環境である。計画では気持ちを新たに職員に夢を持たせ研修や教育もそれに合わせて行える又とない良いチャンスである。
代表取締役 野口哲英
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