【建物設備への投資 資金計画】
将来へのビジョンが明確化された経営計画が策定されたら、次にそれに沿った建物設備、機器計画が綿密に立てられなければならない。
<規模の設定>
規模の設定には新規の開業、建物の移転、増築などが考えれるが何れの場合でも入院、外来、在宅、健診、ドックなど何人の受診患者さん達を見込むかを設定し、それが正しいかどうか仮説を検証しなければならない。医療はお客さんが来てはじめてサービスが提供される受注産業であるから、製造業のようにどれだけ売れると予測してそれに見合う生産設備を整えあらかじめ予定した数量をつくり、ある期間在庫として準備をしておき徐々にさばいたゆくいわゆる見込み産業と違って、これこれの患者さんが来るはずだといった見込み産業的にもくろむと得てして見込み違いとなり、過剰設備投資となって固定費の増大を招き、倒産ということにもなりかねないので気をつけなければならない。
来患予想はマーケティング手法を用いて、地域に自院のターゲットとする患者さん達がどれだけいるかのマーケットリサーチだけでなく、その人達をどう獲得するか、さらには顧客づくりをしてどのように増やしてゆくのか、営業政策、アフターケアー政策、地域連携や医療・福祉機関との連携政策などを総合的に加味した顧客づくりの創り込みが必要となる。医療は今後、一般企業並みの自由競争に放り込まれる状況を考えれば顧客づくり、顧客獲得のための営業概念を取り入れ、営業部門をもうけなければならない。建物の規模や内容が設定されたら次にその事業が成り立つかどうかのフィージビリティー計画が必要となる。
(1) 事業計画(初期投資金額)
投資額算定のための建設費、設計監理費、期中金利、建物取得税、登録免許税、工事雑費、土地代、土地取得税、機械器具、備品、運転資金など。
(2) 資金計画
自己資金(国庫等補助金)(地方補助金) 医療福祉事業団、市中金融機関、ファンド資金など。
(3) 事業収支と償還(借入返済)計画
収入の部:入院、外来、ドック、在宅 その他食堂売店収入など。
支出の部:給与など人件費、医薬材料費、消耗品、その他経費、外注委託
費、賃貸料、支払利息、減価償却費、事業税など。
税引後収支:収入-支出+減価償却費+運転資金
償還計画:医療福祉事業団、市中金融機関(ファンドは資金残高累計より償還期限後に一括返済)
以上金融機関には返済期間年数の各年ごとの収支と償還の数値が求められる。
<今後の資金計画>
今日のように医療 介護 福祉経営環境が激変する時代において、変化へのスピードが求められる。自己資金が充分蓄積されてから設備投資を考えていたのでは競争に乗り遅れる。
また、今日では土地を担保として金融機関から借りようにも土地バブルがはじけて担保価値が低かったり、又経営状態が低迷して金融機関の貸し渋りも起きている。このような状況下、金余りで一般投資家の資金運用に積極的な外資系の金融機関や邦銀の一部と証券会社が組んでファンドを組むところが増えている。
そこで土地を彼らにSPC(特別目的会社)に持たせて医療機関が借りて運営するいわゆるオフバランス(貸借対照表上の土地や建物の固定資産を帳簿から外す)することでスピーディーな投資が可能となる。
ただし、その場合の土地・建物の賃貸料は充分に検討されなければならない。
代表取締役 野口哲英
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