人々は目的を早く達成したいために得てしてその手段、方法を安易に求めたがるものである。最も手軽に手に入れる方法にハウツーものがある。How to とは人の経験や体験を話や書物で得ようとするものだが、中には実際に自分が体験しない疑似体験(人から聞いたり、本から得た知識)で語る評論家によるものがちまたに氾濫し、多くの人がだまされる。ハウツウの多くはお金で買えるが、いわゆる人の経験や体験であるからしてそれを真似したからといって実際その通りにゆくとは限らないが比較的安直に同様な成果が得られる手法を指すものである。
さて、ノウハウとは人に付随する独特の体験であっても特許等を除いてその多くはその人や組織に固有なものであり、おいそれとは真似できるものではない。ノウハウとは体験(汗の時間の結晶)に計画が加わる。換言すれば計画的体験であり、ノウハウが欲しければその人や組織ごと買い取るのが最も手っ取り早い方法である。最近M&Aが盛んなのはライバルとの競争や、発展の為の事業分野の拡大や新規分野への進出を狙ったもので、一から人を育てたり、設備投資をする時間的余裕がないためにノウハウを人や組織を丸ごと金で買おうとするものである。
このように強いノウハウとは技術やサービスに磨きをかけ、他に負けないブランド力にまでなるものであり、ハウツーのように安易に築けるものではない。プロと言われる人には必ず自身の強固なノウハウを身につけた者であり、ただメチャクチャに練習や行動をしてもなかなかそこまで到達できるものではない。それはしっかりした良き指導者につき、基本を身につけ、計画的にステップバイステップで目標を達成して積み上げ、常により高めてゆく努力をした者でしかない。
病院経営においてのノウハウづくりはステップワンのロマンに裏づけられた目標やビジョンを達成する上で今日の現状から日日一歩一歩どのように計画的に行動するかのプロセスにより作られてゆくものである。
ノウハウ=計画×行動×時間 となる。
道元禅師は現成公案の巻で「人もし仏道を修証するに得一法、通一法なり。遇一行 修一行なり。」と示している。目標を達成するには日日一つの課題に会ったら、愚直に1つのことを行い、それにより一つのことから課題を修得し、一つの事柄に通じ、ノウハウとなる。そして更に次の課題にわき目も振らず、浮気もせず継続して一所懸命行動し、積み上げてゆくことが強いノウハウとなるものである。それを焦ってもっと要領よく苦労せずやろうとすると手抜きとなって大きなミスに至ることがしばしば起こる。
禅の弟子の悟りの程度を師が測るために質問を発する公案というものがあるが、「四十九曲がりの山道をまっすぐ歩け」例えば、日光のいろは坂を想像してみるとよい。さあ、経営者ならどう答えるか、読者各々工夫されたい。