経営環境が益々厳しくなる時代においては自院の持てる経営資源 人・物・金・情報をどのように効率よく最大限に生かせるかが最も重要な課題である。人材においては医療法上の人員基準を満たしているかどうかはもちろんのこと、その人材をいかに人財に育て適材適所に用いるかにかかっている。又、コメディカル以外の間接的職員(事務職やヘルパー)においては得てして過剰気味で、少数精鋭になっていない所も多く見られる。
道元禅師の現成公案に「麻谷山宝徹禅師、扇を使う。ちなみに僧来たりて問う。風性常住、無所不周なり。何をもつか更に和尚扇を使う。師曰く、汝、ただ風性常住を知れりとも未だところとして到らずということなき道理を知らずと。僧曰く、いかならんか無所不周底の道理。時に師扇を使うのみなり。僧礼拝す。」
風の性は常にどこにでも行きわたり常に存在するのになぜ和尚は扇を使うのかと問うと、師は屁理屈を知っていても本当の道理がわかっていない。扇を使ってこそ風を生かせるのだと示した。
経営資源の中心となるのは人。人にはそれぞれ素晴らしい能力があるのに、出来が悪い、思うように働かないといって、リストラや新規募集をしてとっかえひっかえ入れ替える。灯台元暗し、もっと足元を見つめて人材を人財にする、即ち育成することをして適材適所で人を生かすことがなければ経営は良くならない。
昨今、民間病院においては医師や看護師不足が叫ばれているが、良い病院には医師も看護婦もしっかりと定着し、経営の二極分化がはっきりしてきている状況にある。又、物たる建物や器械設備においても無駄なスペースや効率の悪い動線、稼働率を稼がない高額な医療機械の導入など宝の持ち腐れで物を生かし切れていない。はては資金の下手な運用や無理な調達で自身の首を締めているような病院が結構多い。このように存続どころか生存も危ぶまれる病院が今後、急速に増えてゆくであろう。