近年我国の医師養成において専門科目指向の弊害が盛んに取り上げられてきた。通常医大を卒業し、国家試験に受かってから
それぞれ大学医局に所属し、数年かけて論文を指導され博士号
を取得したり、専門技術を修得するまで教授の元で過ごすため に広く他科を修める時間もなく、民間病院への派遣や医局長の
役を負わされるうちにチャンスも逸してしまう。
臨床全般の基本的な知識や体験を若いうちに積む、すなわち臨
床という大きな森を鳥のように空から俯瞰した上で個々の樹木、
さらには根、幹、枝、葉を観てゆくことが必要で枝葉から観る、
枝葉末節にこだわると病気を診て病人を診ないということにな
ってしまう。常に全体から個を見つめる努力が今日の一般病院
の勤務医に求められている。また、若いうちに医療のみならず、
社会的体験も多く積むことが人間の生死や患者さんの人生に直
接関わる医師としての義務であろう。
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