この言葉は般若心経に出て来る仏教の根本原理で、禅では空
は無と言い、道元禅師は透脱とか身心脱落と言っている。「無
は時間的には無常(常でない)、全ては時と共に変化する。空
間的には無我とか無自性と言い、全ての物や事はそれに関与す
るあらゆる事物によってあらしめられ、規定される」というも
のである。
白い巨塔で示す如く、いまだに医師が地位や名誉、金銭などに
こだわる人もある。こだわらなければよいのだが、人は時とし
てその反対を行ってしまう。そのことで周囲に働きかけること
で社会に害毒を流すことになる。存在する全てのものは、本来
無や空であるからこだわらない、無心や我欲のない行動が全て
の事物に証される結果を生む。自分の本来の姿(仏性)を周囲
の現象に振り回わされたり、惑わされることなく、生き生きと
生き抜くことが良い死を迎える安心、大往生となるのである。
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