「自己を運びて万法を修証するを迷とす、万法すすみて自己を 之証するは悟りなり」という道元禅師の示す掲があるが、とか
く人は自己主張をし、自分がこのように努力し、自分の力で成 し遂げ成功したと思い勝ちである。しかし、よく考えてみると
人は一人では生きてゆけないものであり、なぜそのように行動 したかは人間社会の中でうまく生きてゆくためにこうありたいと思い行動した結果であり、人に認められて初めてその労が報
いられるものであって、謙虚に振り返ってみれば、それが成就 するまでにはいろいろなまわりの支援、環境があって初めて成
り立ったいわゆる支えられた結果である。
マラソンランナーのQチャンもひと頃絶頂を極めた時にはまわり の人、沿道の人、監督達が自分を後押ししてくれて自分が走ら
されていると語っていたが、オリンピック選考会では無心を忘 れて力を出し惜しみ、駆け引きという自我にとらわれた時に敗
れたことは記憶に新しい。
医療においても患者さんを手術など自分の技量で治した(自己 を運ぶ)と考えることに例えられる。患者さんが治るのはコメ
ディカルの協力と患者の治ろうとする自己治癒力(万法)に負 っているのである。
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