香厳智閑禅師が師のい山霊祐(※1)より「不母未生己前の自
分とは」という公案を与えられたが、この問題が解決できず、
文字知識の及ばざることに気づき、自分が今日まで所持してい
た書籍を全て焼き棄てて山にこもり、一人修行に励んでいた。
ある日、道を掃除していた時、たまたま小石が飛んで竹にあた
った。その響きに香厳は大悟したと言う。私たちは難問に突き
当たると往々にしてそれを避けたり、逃げたりして先送りした
りしてごまかしてしまい勝ちである。自分にとって真の問題解
決はとことんそれをつきつめ、迫ることによってしか避をぶち
やぶったり越えたりはできない。問題解決のひらめきは自分か
ら作り出すというものよりも向こうの方からやってくる(向来
の道取)ものであり、解決へのひたむきな努力と緊張が一瞬ほ
ぐれた時にそれがもたらされるものである。
人の生命に係る医師にはとりわけ患者のかかえる難問に対し
て常に真剣勝負が求められている。
※1「い山霊祐」の「い」の字は文字コード表にこの文字がありませんので、 ひらがなで表記させていただきました。(さんずいに爲という字)
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