メールマガジン【医師のための禅】

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《 医師のための禅 》
その78
2006.05.15

 〜医療 福祉 経営と禅  その2〜
    
”色即是空”
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 この度の診療報酬 介護報酬のダブル改定、さらには2013年までに病院における介護病棟の廃止の決定には多くの民間の中小病院の経営者にとってはいよいよ来たるべきものが来た、いわば津波に襲われるほどの恐怖となって逃げ場を探しているといった状況にあるといえよう。民間企業にとってはいつの時代にも変化が当たり前であっても最近まで泰平の世に浸っていた医療機関にとっては晴天の霹靂と写るのは致し方あるまい。ここに至って今後大競争の時代に存続してゆくには次のように心掛けを変えてゆかなければならない。
 
 まず、第一にここしばらくは経営トップはあらゆる医療経営以外のことから離れ、真剣に経営に専念し、第二に医療の何たるかを再構築し、命を懸ける。第三に開き直ってピンチをチャンスに変えるいわゆる視点を変えることで自分のとらわれた心の壁やバリヤーをつき抜ける事が求められる。いい加減な小手先の改革はもう通用しない。経営の改善や改革よりも更に経営の革新を計ってゆかねばならない。要はトップの心掛け次第であり、役員や理事がとって代われるものではないものと覚悟しなければならない。
 
 これを禅的にみれば般若心経にある「色即是空」「空即是色」がヒントになる。色とは存在する物や事柄と訳されるが、経営を取り巻く環境のことである。たとえば自院に不利な環境は他院にも同じであり、これを解決できれば他に抜きん出ることができる。医療は必需品とは言え、国は先進諸外国に比べて医療機関が多すぎる。病床が多過ぎる。在院日数が長過ぎる。さらに在院日数も長過ぎるとみているのであって要は本物の医療(国民の望む、してほしい医療)をどう効率良く提供できるかにかかっているのである。

 空とは禅で言えば無であり、曹洞宗の開祖 道元禅師の言葉では脱落(抜け切って
何もこだわりがない、ありのままの状況)と同義語である。仏陀がつかんだ宇宙・大自然の原理は絶対であり、その法則は無常、無自性(又は無我)である。無常とはああ無情という人間の思いが入らない絶対真実である。無常とは常ではない、即ちいつも変化する 変化しないものはない。どんな鋼鉄であろうが岩石であろうが時間の経過と共に崩壊して 

   E=MC2 (二乗)  E:エネルギー M:質量 C:光の速度
 
  エネルギーに変化してしまう、人の心も年と共に変わるものであり、医療経営環境も時代や社会と共に変化して当然のことであり、経営者や病院の都合で変わるものではない。又、無自性とはそのものや現象はそれ自体こうだと決めつける絶対的性格を持つものではなく、それを取り巻くまわりによって規定されるものである。
 
  例えば今ここに美しいコーヒーカップがあったとしよう。これはコーヒーを飲む文化のある国や人々においてはコーヒーを飲むための器と認識するが、コーヒー文化のない未開の国の人にあげたら、何かをすくう、何かにかぶせるカバー、または美しい飾り物など様々な限定されないとらえ方がされるであろう。
 
  話を戻せば自院にとってピンチと思えることでも見方を変えれば、今まで医療を自院の都合やドクターの都合や厚労省の政策、はては介護保険に使われ、患者さん達の真のニーズに応えていたか、ニーズを先取りして提案して来たかが問われているのである。医療経営は一般企業と同様、お客さん(患者さんだけではない)があってはじめて成立するものであり、厚労省や支払い機関はお客さんではない。トップが我欲を離れて(無や空に徹して)原点に戻り、医療の本質にせまり、そのあるべき姿が描ければそれが 空即是色の世界である。
 
  人は誰でも病気になりたくない、健康でありたい。人や家族とのより良き関係の中で死を迎えたいなどといった人として当たり前の願いにどう応えてゆくかという根元的なニーズに真摯に向き合うことがチャンスを見出すコツである。

 

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